【本】いつもの店への見る目が変わる?/「飲食業経理の失敗事例55」

本来は開業しようとしている人が読む本なのかもしれませんが、食べ歩きが趣味の人や飲食店で写真を撮ることが多いInstagram職人さんも読んでおくと、お店を見る目が違ってきます。

失敗から学ぶ[実務講座シリーズ]
税理士が見つけた! 本当は怖い 飲食業経理の失敗事例55
辻・本郷税理士法人 飲食業プロジェクトチーム/編著
東峰書房

飲食店の開業を目的として読んだのではなく、仕事の勉強になるかなと思って手に取ってみました。

本書は主に費用面、税金面について、飲食店経営者が失敗したポイントと正しい処理について書かれています。
そう聞くとなんだか難しそうですが事例12「原価率から料理単価を設定したのに赤字?!」はいろいろなお店の情景が思い浮かんできます。

また、事例04「居抜きで店を買う時の注意点」や逆パターンの事例55「飲食店を居抜きで譲渡する場合」もいろいろなお店の情景が思い浮かんできます。

よって実務経験が少ない、経理や会計の勉強を始めたばかりの人でもイメージがつかみやすくなっています。
初心者向けの決算書を解説した本を読む前に読んでおくと用語が頭に入りやすくなるのではないでしょうか。
また、まるっきり会計に興味がなくても身近なことについて書かれている読み物としても楽しめます。

これによって馴染みのお店の気ままそうに見えるマスターも、行政への様々な届け出の書類をクリアしていたり、原価計算をちゃんとしていたりするので尊敬の念が抱けます。

【本】料理好きはマスターしてる感覚かも/玉村豊男「料理の四面体」

サハラ砂漠のそばでの野営時に、アルミ鍋で作った羊肉のシチューは全ての料理とつながっていました。

料理の四面体
玉村豊男/著
中公文庫

毎週日曜日22時~TBS「林先生が驚く初耳学!」2016年6月26日に放送された回で「料理の四面体」が紹介されました。
社会に出て直面した物事を、シンプルに整理することは問題解決に役立つということで本書を例にとられていました。

「なぜこのタイミングで塩を入れるか」といった手順の根拠を分かりやすく説明している本かと思って読んでみたら違っていました。
料理は「火、空気、水、油」の要素が組み合わさったものです。
この4つの点を結ぶと四面体ができます。
そして全ての料理は、この四面体のどこかに位置しています。

「火」から焼き、「油」へ寄って炒め物、さらに揚げ物へとなります。
そこへ醤油などを加えると「水」へ寄っていきます。
このようにシンプルに整理していくと全ての料理が四面体に収まるのです。
「あ、そうか!」と気がついた時は、料理について階段を一つ上ったような感覚でした。

このシンプルな整理術を最初からグイグイ説明されるのではなく、まず野営料理から本書は始まります。
野営なので豪快な調理法ですが、想像しただけで美味しそうです。
作者は砂漠で1つのアルミ鍋で作ったものを日本に帰ってから再現します。
再現は、材料が違ったり調理器具の条件が違ったりします。
他の国の料理も完璧ではない条件で再現を試みます。
でも作り方を整理すると、どんな料理でも野営の羊肉のシチューへと調理法の考え方が行き着くのです。
ここでハタと料理はなんとシンプルなのかと気づかされます。

ソースの作り方も、基本の手順をひとつ知っているだけでいくつもの種類を作れるとされています。
料理好きな人が冷蔵庫の残り物でさっと料理できるのは、この考え方を無意識に会得しているのかもしれません。

揚げ物の正しい分類学上の名前も整理できます。
素揚げ、天ぷら、フライ。
「粉を含む流動物質をつけて揚げたもの」
これで四面体のどこに位置するのかも分かります。

林先生がシンプルに整理することとして本書を挙げたのがよく理解できます。
料理はシンプルに整理できるのです。

さらに本書は普通に料理エッセイとしても秀逸で、いろいろなお肉を焼いているところからソースの良い香りが胸いっぱいに広がるような気がしてきます。
通勤電車の中で読むと、うっかり何かを食べたくなって、いてもたってもいられなくなります

【本】買い物とわたし/山内マリコ著

買い物とわたし
お伊勢丹より愛をこめて
山内マリコ/著
文春文庫


週刊文春で連載されていた買い物エッセイです。
以前ユーミンの旦那さんである松任谷正隆氏の『僕の散財日記』(文春文庫)がたのしく読めたので手に取ってみました。

なぜ人の買い物なのにおもしろいのでしょうか?
読みながらもこれをずっと考えてしまいました。
本書も生活に必要なものでありながらも生活感あふるるものではなく、少し良いものを紹介されています。
ブランドものでも軽自動車が買えそうなカバンではなく、手が届きそうな値段のものや財布などが登場します。
質のいいタオルや家電、リトルブラックドレスなどに夢はつのるばかりです。
挿絵の下に加えられている後日談もさらに空想を広げます。

自分は人の買い物で夢を見ているのでしょうか?
これはよくあることなのか、珍しいタイプなのでしょうか?
他にも買い物エッセイは誰が書いてるのかと検索してみると

岸本葉子さんの『買い物の九割は失敗です』(扶桑社)
「買い物エッセイ第4弾」となっていることからシリーズもので4冊目であることがわかります。
シリーズ化されるほど買い物エッセイのジャンルは人気があるようです。

やはり女性向けが多いのかなと思ったら
村上龍さんの『案外、買い物好き』(幻冬舎文庫)
がありました。
松任谷正隆さんの買い物エッセイでもそうだったのですが、かなりの量を買われているようです。
世界各都市で買われたものに、男性は夢を重ねるのでしょうか?

ササッと調べただけでも有名どころが買い物エッセイを書かれているので需要がずいぶんあると思われます。
自分では買っていないのに、文章で読んでたのしむ心理はこれいかに?
買い物エッセイは旅行記の位置にあるようにも思えます。

もうすでにこの辺りの心理は、経済ジャンルで研究されているのでしょうか。
論文とかも調べればありそうです。
「消費・心理」はいつか読みたいカテゴリーとして心にメモをとりました。
でもまずは他の買い物エッセイをたのしく読みます!(消費心理は難しそうですから……)

【本】雨のことば辞典/倉嶋厚 他 編著

雨のことば辞典
倉嶋厚・原田稔/編著
講談社学術文庫


ふと目に留まって手に取り「へーっ、辞典だから確かにつくりは辞書だよなぁ」とパラパラとめくりました。
失礼ながら、どういう人が買ったりするのかと思ってしまいました。
どの辺の読者層を想定して、どのくらい売れると想定して作ったのかなぁと考えました。

本書は単行本での発売14年後に文庫化されたものです。
講談社学術文庫なるものも初めて知りました。
おそらくシリーズは本屋さんで目に入ってはいたのでしょうが、全然意識をしておりませんでした。
でも巻末の「講談社学術文庫の刊行に当たって」という文章を読んで、自分の下世話さにちょっと恥ずかしくなりました。
学術をポケットに入れることをモットーとして生まれた文庫だそうです。
「どのくらい売れる」とか考えてすみませんでした。

ファーストコンタクトは、俳句はもちろんのことことばで何かを創作されているなら語彙力の補完にいい、でした。
「雨についてのことばがこんなにある」と感心しながら読むはずでした。
ふーん、というスタンスでいたつもりですが気づけばじっくり読んでしまっていました。

編者の方もおっしゃっているように「雨の恵みを表すことばが意外に多い」のです。
季節の情景を思い描いて、旅行にでもいったかのようでした。
行間に豊かな眺めが広がります。

他にも雨にまつわるコラムやことわざ・慣用句があります。
ことわざ・慣用句には「晴耕雨読」など有名なものもありましたが、ほとんど知らないものばかりでした。
こちらも説明を読むだけで景色が広がって、それにまつわる落語のひとつでもありそうでした。

当初に思っていた以上にはまって読んでしまいました。
たまにパラパラとめくってしまうような、手放しにくい1冊です。

【本】社会人大学人見知り学部卒業見込/若林正恭著

完全版
社会人大学人見知り学部卒業見込
若林正恭/著
角川文庫



お笑い芸人、オードリーの若林正恭さんの著書です。
最初にオードリーの若林さんを見たときは、ずいぶん脱力系の人だなぁと思いました。
ガツガツしていないというか、達観しているイメージでした。
でも本書を読むと、脱力とはほど遠くいろいろ考えていらしたようでした。

TVで顔とお名前は一致してはいたのですが、人となりに興味はあまりありませんでした。
するとEテレで毎週土曜22時から放送している「SWITCHインタビュー達人達(たち)」という番組で芥川賞作家の羽田圭介さんと対談されていたのです。
それまで優等生で、人と上手くやっていくイメージで「ロックな人間」の部分があるのが意外でした。
さらに羽田圭介さんと息があっていて、とてもおもしろい対談でした。

脱力系に見えるロックな人間の人となりに俄然興味がわいてきました。

本書は帯に「中二病全開」とあったそうで、自意識を軸に書かれています。
でも文体は過去形なので安心して成長過程が見られます。
社会と折り合いを付けていくのも、不本意ながらという形ではなく「慣れていく」のです。
中には驚くほど慣れないことも含まれています。
多くの若者が「共感した」という感想を寄せたのも、慣れと慣れないことのスキマに自分を重ねたのかもしれません。

私は視点がとてもおもしろいと感じました。
心のすみにチラっとあった自意識がちゃんと表現されています。
でもだんだんと生きやすくなっていっているのです。
そんな意図はなかったでしょうが、少しホッとします。
リフレッシュによい読み物です。

【本】税金のしくみと疑問解決マニュアル138/河原大輔監修

すぐに役立つ
図解とQ&Aでわかる
最新 税金のしくみと疑問解決マニュアル138

河原 大輔/監修
三修社



別件で本を探していたら偶然に見つけました。

138項目にわたり一問一答形式で様々な税金の説明がされています。
職業柄、知っていることもありましたが明文化されることによって知識がはっきりしました。

税金に関して書かれた本はたくさんありますが、出だしの「税金とは」で面倒くさくなってしまうことが多いです。
本書は質問形式の章立てで、先に興味のあるところから読みすすめられます。
そして質問も住宅ローンについてやNISA講座についてなど身近なものが多くあり、とても分かりやすく説明されています。
「確定申告を忘れてしまった」など、たまに疑問に思うけれども具体的にはどうするのか知らないことも質問にあります。

私は義務教育か、せめて高校か大学でファイナンシャルプランナー3級レベルの授業があればいいのにと思っています。
「知っている」は、今後の人生においてお金への対し方が全然違ってくるはずです。
なので本書も日常生活の税金のことを中心に、不動産、相続、贈与、資産運用の知識が身につきます。
少し勉強したいけれども、本を読んでも難しくて頭に入ってこないという人は情報の交通整理ができるのでオススメです。

【本】お父さんは時代小説が大好き/吉野朔実著

吉野朔実劇場
お父さんは時代小説が大好き

吉野朔実/著
本の雑誌社



吉野朔実さんの訃報に「現在は書評を連載していた」となっていて読んでみたいと思いました。
文筆家が本業ではない人の書いた書評に興味があったのです。

でも、書籍化されている本書を読んでみたら本に関するエッセイ漫画でした。
詳しい解説とかではなく、その本やジャンルについてのエピソードが描かれています。
書評とは少し違うのですが、想像がかき立てられてむしろ印象に残りました。
表題は好評だったエピソードの一つです。

さらに合間に対談が行われています。
本を読むことについてサラリと語りあっていて、あるあると思ったりも。

本書の初版は1996年12月です。
まだ「検索」が一般的ではない頃で「分からないことを調べる」のも本がとても重要なアイテムでした。
あの頃の読書は、今よりももっと自分の栄養になる大事な手段の一つだったと思い出されます。

1991年から「本の雑誌」で連載されて25年続いたそうです。
この長さからも、人気の漫画家がちょっと描いた読書日記だけではないことが伺えます。
「そうだ、本を読もう」となる一冊です。
その後シリーズ化されているので好評なのもうなずけます。
(現在は電子書籍のみ扱いのようです)

【本】貴様いつまで女子でいるつもりだ問題/ジェーン・スー著

貴様いつまで女子でいるつもりだ問題

女は生涯、いち女子である―が、ハッと気付けばいま何歳!?
ジェーン・スー/著
幻冬舎



漠然と、モヤモヤと考えていたことがはっきりと言語化されているすがすがしさがあります。
他の書評でも「首がもげそうなほどうなずいた」などがよくありました。

そう、別に私たちはいつまでも少女と同等に扱えと「女子」と言っているのではないのです。
各々が社会の役割を全うしながらも「女は生涯、いち女子」なのです。
このあたりを男性にも嫌みなくさらりと言語化していただいて、本書はありがたかったです。

「女子」は蒙古斑だと思っていたら刺青だった
見せるのはTPOをわきまえて

私の大好きな「女子」の言及です。
ジェーン・スーさんは女性の代弁者という立場になりそうですが、どこかどっしりと構え、私たちが思っている以上に地に足がついているのが魅力です。

「ブスとババアの有用性」は読んで以来、長い間なんだかなぁと思っていたことがモヤが晴れるようにすっきりいたしました。
これを切り取る視点と筆力はすばらしいです。
才能を発揮していただく環境にたどり着いていただいてありがとうございます!

本書でも中年向け女性誌を作って欲しいと書かれていましたが、2016年新春スペシャル限定版として発売された週刊文春Womanでも読みたい雑誌について寄稿されていました。
これから独特の切り口で新しい媒体が生まれるかもと、楽しみでもあります。
ジェーン・スーさんの才能がいかんなく発揮できますように、ナムナム。

【本】周防正行のバレエ入門/周防正行著

周防正行のバレエ入門

周防正行/著
太田出版



バレリーナの草刈民代さんを妻にもつ、映画監督が書いたバレエの入門書です。
これまでも初心者向けの本はたくさんありましたが、それでもバレエに興味がある人を前提としたものでした。
これは映画の撮影をするために監督が草刈民代さんと出会うまで、バレエをよく知らなかった人の目線で書かれています。

「バレリーナの生活を知っていたら映画出演など頼めなかった」

という監督の言葉のように、華やかだけではない生活が描かれています。

第1章 周防監督、バレエに入門する
第2章 周防監督、草刈民代に入門する
第3章 「ダンシング・チャップリン」入門

このような章立てになっています。
草刈民代さんに初心者ならではの素朴な疑問をぶつけていきます。
今までのバレエ入門書は一般的なことが書いてありましたが、本書は「草刈民代さんの場合は」という注釈がつきますがとても具体的です。
そしてインタビュアー周防監督の目線が家族であり、映画監督という表現者の目線でもあります。
温かく、でも冷静な目線です。

第3章は2011年4月に公開された映画「ダンシング・チャップリン」について語られています。
監督はもちろん構成やプロデューサーも周防正行監督がされ、出演は草刈民代さんです。
バレエ団の舞台裏の映画は今までもありましたが、本書はバレエ映画の製作について語られていておもしろいです。

本書はバレエにそれほど興味のない人が周防正行監督の作品が好きなのでつい読んでみた、といっても十分に楽しめます。
さらに芸術に対しての引き出しが一つ増やせるお得なものになっています。

【本】女子をこじらせて/雨宮まみ著

女子をこじらせて

雨宮まみ/著
ポット出版



Twitterで能町みね子さんと北条かやさんが「こじらせ」について揉めているの(現在はもうそれだけではなくなっていますが)を見て本書を「そうだ、読もう読もうと思ってんだ」と思い出しました。

読むまでは少しは当てはまるのかもしれないな、という程度の「こじらせ」の認識でした。
でも、そうだそうだ私もこんな感じだったとすっかりなかったことにされている心情を思い出します。
池の底に沈んでいたオリがもわもわと浮いてくるようでした。

気持ち悪い自分を思い出せます。

忘れていた、自意識過剰で卑屈な自分が部屋のすみに立っているようでした。
当時はどうしてあんなに自分に自信がなかったのでしょうか?
雨宮まみさんは個性的なファッションに傾倒されましたが、私はひたすら地味に傾倒しました。
暗い色のダボっとした洋服ばかりを選んで着ていたような気がします。

社会人となった雨宮まみさんは、学生のころのような「こじらせ」とはまた違った「こじらせ」かたをします。
他者の視線を気にしすぎる自分から、内面の落としどころを見失う自分へ。
すっかり大人になって鈍くなったからか、私はこの感情にどうやって折り合いをつけていったのか思い出せません。
こじらせる前に治ったと思い込むことで、折り合いをつけているのかもしれません。

「女子」を「こじらせる」とういう言葉は、今まで池の底に沈めていたものに名前があったんだと気づかされるものでした。