【本】お父さんは時代小説が大好き/吉野朔実著

吉野朔実劇場
お父さんは時代小説が大好き

吉野朔実/著
本の雑誌社



吉野朔実さんの訃報に「現在は書評を連載していた」となっていて読んでみたいと思いました。
文筆家が本業ではない人の書いた書評に興味があったのです。

でも、書籍化されている本書を読んでみたら本に関するエッセイ漫画でした。
詳しい解説とかではなく、その本やジャンルについてのエピソードが描かれています。
書評とは少し違うのですが、想像がかき立てられてむしろ印象に残りました。
表題は好評だったエピソードの一つです。

さらに合間に対談が行われています。
本を読むことについてサラリと語りあっていて、あるあると思ったりも。

本書の初版は1996年12月です。
まだ「検索」が一般的ではない頃で「分からないことを調べる」のも本がとても重要なアイテムでした。
あの頃の読書は、今よりももっと自分の栄養になる大事な手段の一つだったと思い出されます。

1991年から「本の雑誌」で連載されて25年続いたそうです。
この長さからも、人気の漫画家がちょっと描いた読書日記だけではないことが伺えます。
「そうだ、本を読もう」となる一冊です。
その後シリーズ化されているので好評なのもうなずけます。
(現在は電子書籍のみ扱いのようです)

【本】貴様いつまで女子でいるつもりだ問題/ジェーン・スー著

貴様いつまで女子でいるつもりだ問題

女は生涯、いち女子である―が、ハッと気付けばいま何歳!?
ジェーン・スー/著
幻冬舎



漠然と、モヤモヤと考えていたことがはっきりと言語化されているすがすがしさがあります。
他の書評でも「首がもげそうなほどうなずいた」などがよくありました。

そう、別に私たちはいつまでも少女と同等に扱えと「女子」と言っているのではないのです。
各々が社会の役割を全うしながらも「女は生涯、いち女子」なのです。
このあたりを男性にも嫌みなくさらりと言語化していただいて、本書はありがたかったです。

「女子」は蒙古斑だと思っていたら刺青だった
見せるのはTPOをわきまえて

私の大好きな「女子」の言及です。
ジェーン・スーさんは女性の代弁者という立場になりそうですが、どこかどっしりと構え、私たちが思っている以上に地に足がついているのが魅力です。

「ブスとババアの有用性」は読んで以来、長い間なんだかなぁと思っていたことがモヤが晴れるようにすっきりいたしました。
これを切り取る視点と筆力はすばらしいです。
才能を発揮していただく環境にたどり着いていただいてありがとうございます!

本書でも中年向け女性誌を作って欲しいと書かれていましたが、2016年新春スペシャル限定版として発売された週刊文春Womanでも読みたい雑誌について寄稿されていました。
これから独特の切り口で新しい媒体が生まれるかもと、楽しみでもあります。
ジェーン・スーさんの才能がいかんなく発揮できますように、ナムナム。

【メモ】海外へ移住して仕事をするって年金は?

先日テレビ番組でマレーシアやタイで働く日本人を紹介していました。
彼ら・彼女たちは現地の日本企業の社員を相手にした仕事をしています。
「日本語だけでOK」とことさらハードルの低さを強調していました。
お給料は支給額で20万円そこそこでしたが、現地の物価がかなり安いので高級コンドミニアムに住み、休日は旅行をしたりととても「良い生活」ぶりでした。

日本でも月給20万円は大卒初任給ぐらいの金額です。
でもそこから税金や社会保険料を引かれると手取りで16~17万円くらいになってしまいます。
さらに家賃や光熱費、携帯代を払っていくと慎ましい暮らし、とてもではありませんが「良い生活」は難しいです。
もしくは月給20万円はまだいい方で、時給1,000円の仕事だとすると週6日は働かないと20万円は稼げません。

よって日本で正規雇用が難しい人が海外移住をするのは一つの選択肢としてはアリかなぁ、と思います。
日本でブラック企業に務めてカツカツの生活を小休止する意味も含めて。

でも、番組を観ていて思ったのが
「年金はどうするの?」
「いつまで働けるの?」
でした。

日本で採用されて日本の会社に在籍しての派遣期間が5年以内ならば厚生年金が適用されますが、おそらくそんな美味しい話は皆無でしょう。
現地法人に採用されることになると思うので、海外移住の時点で国民年金は強制加入ではなく任意加入になります。
海外に住んでも国民年金に加入したければ、手続きをして保険料を口座引落などで払い続けます。
日本の年金はどうなるか分からないから加入しない、という人も多そうです。
でも国民年金に加入し続ければ、不慮の事故などで障害が残ってしまった場合などに障害基礎年金が受給できます。

番組で紹介されていたマレーシアはまだまだ社会保険が十分整備されていないようです。
医療保険や失業保険も公的なものはありません。
この辺りの「何かあったらどうするのかな」という部分に、現地の平均月収よりも多くもらえるのだと思います。

さらに「いつまで働けるの?」は、マレーシアやタイは経済成長が著しく物価も上昇中です。
日本企業が現地の安い労働力を求めているのなら撤退もありえます。
成長市場を求めていても、物価上昇に月給20万円が現地平均月収を下回ってしまう可能性もあります。

よって安易な気持ちで海外移住するのはのちのち苦しいかもしれません。
でも「スキルを身につける」を前提をして数年働くのはアリだと思います。
日本人相手に日本語で仕事をしていた、では日本に帰っても職歴として評価されにくいです。
20160514移住勉強
ではずっと日本に居住している方がいいのでしょうか?
もし、日本で働いていてもブラック企業などに勤めて生活が不安定だとスキルアップを考える余裕がないと思います。
ならば海外で働いて余裕のある暮らしをして、スキルを磨く勉強をしてもいいのではないでしょうか。
ビジネス英語を基本として、何かプラスになる職歴をみにつけます。
営業であったりマーケティングであったり。
ワーキングホリデーも「ホリデー」の色合いが濃くて日本に帰国後の就職に結びつきにくいと聞いたことがあります。

不安定な生活を一発逆転するために海外移住ではなく、勉強する環境を整えるための移住はアリですよね。
でも、頑張る強い意志は必要ですが……。

【本】周防正行のバレエ入門/周防正行著

周防正行のバレエ入門

周防正行/著
太田出版



バレリーナの草刈民代さんを妻にもつ、映画監督が書いたバレエの入門書です。
これまでも初心者向けの本はたくさんありましたが、それでもバレエに興味がある人を前提としたものでした。
これは映画の撮影をするために監督が草刈民代さんと出会うまで、バレエをよく知らなかった人の目線で書かれています。

「バレリーナの生活を知っていたら映画出演など頼めなかった」

という監督の言葉のように、華やかだけではない生活が描かれています。

第1章 周防監督、バレエに入門する
第2章 周防監督、草刈民代に入門する
第3章 「ダンシング・チャップリン」入門

このような章立てになっています。
草刈民代さんに初心者ならではの素朴な疑問をぶつけていきます。
今までのバレエ入門書は一般的なことが書いてありましたが、本書は「草刈民代さんの場合は」という注釈がつきますがとても具体的です。
そしてインタビュアー周防監督の目線が家族であり、映画監督という表現者の目線でもあります。
温かく、でも冷静な目線です。

第3章は2011年4月に公開された映画「ダンシング・チャップリン」について語られています。
監督はもちろん構成やプロデューサーも周防正行監督がされ、出演は草刈民代さんです。
バレエ団の舞台裏の映画は今までもありましたが、本書はバレエ映画の製作について語られていておもしろいです。

本書はバレエにそれほど興味のない人が周防正行監督の作品が好きなのでつい読んでみた、といっても十分に楽しめます。
さらに芸術に対しての引き出しが一つ増やせるお得なものになっています。