【本】タモリ論 / 樋口毅宏著

タモリ論

樋口毅宏/著
新潮社



私はウンチクなどを聞くのがとても好きです。
なので、ものすごい鉄子(研修中)というわけではないのですが、鉄道の話を聞くのが面白くて結果的に鉄子(研修中)になっています。

ウンチクが好きなのでTV番組のブラタモリやタモリ倶楽部をよく観ます。
好きなタレントは?と聞かれてもタモリさんとは答えないのですが、よくタモリさんの番組は観ます。
好きとか嫌いとかは超越してしまった存在です。
心のかたすみで、空気のように存在するタレントさんでした。

そしてある日「タモリ論」という本があることを知りました。
正直、タモリさんは好きでも嫌いでもないポジションの人だったので、そこをピンポイントで論じちゃうんだと思いました。

著者の樋口毅宏氏は小説家です。
デビュー作の「さらば雑司ヶ谷」は存じておりましたが未読でした。
本書にも引用があったのですが、タモリさんについても書かれているので後日そちらの本も読んでみたいと思います。

冒頭で作者はタモリさんは学びきれる人ではない、と書いています。
ここに私が「ピンポイントで論じちゃうんだ」と思ったことが集約されています。
本書を読んで、確信したのはタモリさんは天才的なつかみどころのない人ということです。
ご本人の美学でもあると思います。

第三章はビートたけしさんについてです。
タモリさんとたけしさんの対比についてなのですが、途中から「あれ、たけしさんの本だっけ?」と思うほどたけしさんについても熱く語っています。
タモリさんを語る上でも外せない、巨星なのです。

また、第四章でも明石家さんまさんについても触れています。
さんまさんのお笑い界での立ち位置との比較が、タモリさんを語る上で重要なのかもしれません。

若い芸人さんでタモリさんのような雰囲気の方はなかなか見かけません。
仕事から帰ってきてTVをつけたら勢いだけのネタや、突拍子もないことだけがネタのお笑い番組は疲れます。
その瞬間は笑えても、反動でむなしくなります。
力を抜いているように見せてもらえるタモリさんの芸風は、とても心地いいです。
その芸風を目指す若手芸人さんはたくさんいらっしゃるとは思いますが、なかなか売れる立場までもってくるのは大変でしょう。
芸風の変遷はあったものの、やはりタモリさんは天才だったと再確認せざるをえません。

本書を読んで、ますますタモリさんは明言しずらいタイプの、つかみどころのないタイプのタレントさんだとわかりました。
「分からない」というのがよく分かった本でした。

【本】読まずにはいられない /北村薫著

読まずにはいられない
北村薫/著
新潮社



北村薫さんのエッセイです。
デビュー当時は覆面作家として性別さえも不明の方でした。
豊富な読書量が作風から感じられます。
「円紫さんと私」というシリーズを、殺人事件が発生しないミステリーで好んでよく読んでいました。

そんな作家さんが書いた本にまつわるエッセイなので読んでみました。
いろいろな雑誌などに寄稿したものを集めたものです。
「東西ミステリーベスト100」では[あらすじ]と[うんちく]が書かれています。
うんちくが面白くて、読んでみようという気にさせます。
エラリイ・クイーンは作風が大きく変貌したそうで、乱読では得られないうんちくです。

また別に解説も書かれています。
[核心に触れた箇所があります。ご注意ください]
となっていたりするほど鋭く切り込んでいます。
批評と同じ、解説も読んだ後に読むもの前提なのですね。

基本的に内外の本について書かれているのですが、ご自分の著作についても触れられています。
主に書かれたころのエピソードなのですが、背景が知れて面白いです。
1作で2度おいしい読み物でした。

最後の方は本に絡めながらも日常生活のエッセイで、ご本人の人となりがあらわれいます。
とても久しぶりに思い出しましたが、文体がとても好きな作家さんです。
見習いたいものです。

【本】シンプルに書く 伝わる文章術/阿部紘久著

シンプルに書く
伝わる文章術

阿部紘久/著
飛鳥新社



読んだ本の感想をブログに書くにあたり、書評についての書籍「ニッポンの書評」(豊﨑由美/著)を読みました。
そして漠然と、

私の文章はどうなのかしら?

と、思ったのです。
読書感想文の書き方はおろか、そもそも具体的な文章の書き方を習っていないような気がしました。
外国では子供のころにみっちり習うらしいので、テクニックというかルールを知りたくなりました。
そんなことを考えながら生活していると目に留まりやすくなるのか、Twitterで本書が紹介されていました。

「シンプル」という題名からも、本書もシンプルな構成です。
細かい章立てで、すっと頭に入ってきます。
原文を例題にして改善文を提示してあります。
確かに改善文の方が美しい文章です。
無意識だったことを明文化されたような、霧が晴れるような気持になります。

筆者は海外赴任経験があるのですが、母語による「誰にでも分かる言葉で表現」することがビジネスの成功につながると述べられています。
それができないと、外国語でも表現できないそうです。
国際社会の場で日本語力が鍛えられるというのも意外です。
シンプルに表現することによって、自分の考えが明確化されるというのも納得がいきます。

巻末付録の「いい文章を書くためのヒント 総覧」を読むだけでも美しい文章を書く要点がつまっていて、何度も読み返したくなりました。

【本】投資家が「お金」よりも大切にしていること/藤野英人著

投資家が「お金」よりも大切にしていること
藤野英人/著
星海社/発行



Twitterで「泣いた」と紹介されていたので読んでみました。
(実際は、泣きポイントは人それぞれということで)

ファンドマネージャーという、人から預かった資産を運用するプロが書いたお金の本です。
投資のコツとかではなく、もっと哲学的な感じです。
私は今までも使ったお金の対価は漠然とイメージしてきたつもりでしたが、その先の消費行動についも説明されています。
対価の他の意味については考えることなく、無意識にお金を使ってしまっていたことを実感しました。

分かっているつもりだったけれども実行できていなくて、これからは肝に命じようと思ったのが「未来に投資する」です。
よいプレゼンは未来について語るという例が挙げられていて、現在の日本の停滞がここの辺りにありそうでした。

お金について知らないから「お金=悪」となるそうです。
お金の話はタブーというか、はしたない感覚が自分にもありました。
私はどこで清貧を良しとする考え方を身に着けちゃったのでしょうか?

そして、ひふみ投信を運用されている方が「お金よりも大切なものがありますか」と問うことが意外でした。
道徳の授業的には誰でも言えることですが、きちんと表現されるってなかなか無いかなと。
きれいごとばかり書いてある感じなのですが、どれも納得できます。
もっときちんと、お金について向き合おうと思えました。

最後が「エイヤ!」で結ばれているのが象徴的です。

【本】ニッポンの書評/豊﨑由美著

ニッポンの書評
豊﨑由美/著
光文社新書



書評についての本です。
ブログを書くにあたって、読んだ本について書くのは読書感想文以来だなと思ったのです。
そして、ふと、宿題で読書感想文は書いたけれども書き方って習ったっけ?と思ったのです。
なので書評について調べてみようと思い、検索したらこちらにたどり着きました。

まず、自分で書くにあたって「粗筋ってどこまで書いていいの?」が疑問でした。
ビジネス書とかだったら内容がほとんど分かってしまう気がします。
ネタばらしについては豊﨑さんも言及されていて、また日本と海外の書評の違いも紹介されています。
粗筋のまとめ方で書き手の差が出るようです。

そして知らなかったのが、書評と批評の違い。
意識してませんでした。
書評は本を読む前に読まれるもので、批評は読んだ後に読まれるものだそうです。
なので、書評は読者の「読みたい」を引き出しながらもネタばらしをしないものなのだそうです。
難しい!

また、同一作品の書評を複数紹介されています。
書き手が違うと全然違うものになります。
豊﨑さんによると、書評には背景があるそうです。
それまでに読んだ本の蓄積などによる力が。
「その人にしか書けない書評。」
想像より奥深いです、書評。

巻末にはメディア史研究者の大澤聡さんとの対談があります。
「ガラパゴス的ニッポンの書評~その来歴と行方」
大澤さんは書評の歴史を研究されています。
呼び名の起源から職業としての書評家について語られました。

今までは書評は雑誌のすみに載っているもので、あまり意識していませんでした。
これからは、機会があれば同一作品の書評を読み比べて筆者の背景を堪能してみたいです。
後でちゃんと文章にまとめる、と思いながらする読書もまた自分の中での蓄積が変わってきそうです。
自分の読書の背景を意識せざるをえないことになりそうです。