「円紫さんと私」というミステリーのシリーズをよく読んでいました。
ミステリーといっても殺人事件の起こらない作風で、とても好きな作家さんです。
このシリーズの5作目の後はもう続編は書かないとされて17年が経ちました。
それが、なんと続編の「太宰治の辞書」が刊行されたので読んでみました。
このシリーズは発売のリアルタイムでは読んでおらず、長時間通勤になってから読みました。
ですから青春の思い出ではないはずなのに、主人公が大学生だったので甘酸っぱい記憶がシリーズにはあります。
本書も当時から20年以上経っている設定で、主人公は社会人になって結婚してお子さんもいるようでした。
懐かしい文体に「そうそう、これこれ」となりながらも、大人になってしまった主人公に「そうだよねぇ」となります。
勝手にノスタルジーです。
復刻本や全集、芥川龍之介や太宰治をモチーフに話は進んでいきます。
ビブリア古書堂の事件手帖とはまた違った、日常生活を軸に本からミステリーが紡がれます。
ミステリー、とは大袈裟な感じもする日常の「紡ぎ」です。
収録されている前の二作には相棒の円紫さんは登場しません。
二作目の「女生徒」で友達の正ちゃんとの会話もとても良かったのですが、表題の三作目「太宰治の辞書」での円紫さんとの会話は「そうそうそう!これこれこれ!」と久しぶりに良質のものに出会ったように高揚しました。
無駄のない、濃いけれどもさっぱりしているのです。
このシリーズは、作者の北村薫さんの読書量が反映されています。
もっと丁寧に読書をしよう、読書には読み返す楽しみもある、と思い出させてもらえます。
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