サハラ砂漠のそばでの野営時に、アルミ鍋で作った羊肉のシチューは全ての料理とつながっていました。
料理の四面体
玉村豊男/著
中公文庫
毎週日曜日22時~TBS「林先生が驚く初耳学!」2016年6月26日に放送された回で「料理の四面体」が紹介されました。
社会に出て直面した物事を、シンプルに整理することは問題解決に役立つということで本書を例にとられていました。
「なぜこのタイミングで塩を入れるか」といった手順の根拠を分かりやすく説明している本かと思って読んでみたら違っていました。
料理は「火、空気、水、油」の要素が組み合わさったものです。
この4つの点を結ぶと四面体ができます。
そして全ての料理は、この四面体のどこかに位置しています。
「火」から焼き、「油」へ寄って炒め物、さらに揚げ物へとなります。
そこへ醤油などを加えると「水」へ寄っていきます。
このようにシンプルに整理していくと全ての料理が四面体に収まるのです。
「あ、そうか!」と気がついた時は、料理について階段を一つ上ったような感覚でした。
このシンプルな整理術を最初からグイグイ説明されるのではなく、まず野営料理から本書は始まります。
野営なので豪快な調理法ですが、想像しただけで美味しそうです。
作者は砂漠で1つのアルミ鍋で作ったものを日本に帰ってから再現します。
再現は、材料が違ったり調理器具の条件が違ったりします。
他の国の料理も完璧ではない条件で再現を試みます。
でも作り方を整理すると、どんな料理でも野営の羊肉のシチューへと調理法の考え方が行き着くのです。
ここでハタと料理はなんとシンプルなのかと気づかされます。
ソースの作り方も、基本の手順をひとつ知っているだけでいくつもの種類を作れるとされています。
料理好きな人が冷蔵庫の残り物でさっと料理できるのは、この考え方を無意識に会得しているのかもしれません。
揚げ物の正しい分類学上の名前も整理できます。
素揚げ、天ぷら、フライ。
「粉を含む流動物質をつけて揚げたもの」
これで四面体のどこに位置するのかも分かります。
林先生がシンプルに整理することとして本書を挙げたのがよく理解できます。
料理はシンプルに整理できるのです。
さらに本書は普通に料理エッセイとしても秀逸で、いろいろなお肉を焼いているところからソースの良い香りが胸いっぱいに広がるような気がしてきます。
通勤電車の中で読むと、うっかり何かを食べたくなって、いてもたってもいられなくなります